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感想『ブラック・ウィドウ』いま製作されて良かった、ナターシャ・ロマノフの軌跡

これ以上のタイミングはないナターシャの主役映画でした!

 

 

ども、黒輔です。

 

最近、ようやく大作系洋画がスクリーンにちらほらカムバックしてきて大変喜ばしいです。私も『モータルコンバット』や『ゴジラvsコング』を劇場で鑑賞しました。そんな中で、MARVEL映画が2年ぶりに劇場公開されたのは、コロナ禍からの世界的映画復興における、特筆すべき出来事として捉えても大げさではないのではないでしょうか。(とはいえ、日本は茨城のロックフェスが中止になってしまうなど、まだまだ厳しい状況ですね)

 

さて、本題の『ブラック・ウィドウ』です。2年待ちましたが、素晴らしい映画だったと思います。彼女が『アイアンマン2』で初登場してから10年経ち、社会の価値観はずいぶん変化したと思います。当然、その間に物語の中のナターシャも前に進んで、そして「ある結末」を迎えています。そこで満を持しての主演作。たとえばMCUのフェーズ1あたりで製作されていたら、もっと凡庸なヒーローのオリジンムービーになっていたでしょう。だから、このタイミングで本当に良かった。

 

『エンドゲーム』『ファー・フロム・ホーム』から2年開いてしまい、(僕はあろうことかDisney+のドラマシリーズも観ていないので)ややテンションの持っていき方が不安でしたが、上映前の「2023年までのMCU告知映像」とMARVELのタイトルロゴで一気にあの熱狂を思い出すことができました。そして映画本編が始まるわけです...

 

ブラック・ウィドウ (オリジナル・サウンドトラック)

映画情報

題名 ブラック・ウィドウ

原題 Black Widow

監督 ケイト・ショートランド

脚本 エリック・ピアソン

音楽 ローン・バルフ

製作 ケヴィン・ファイギ

製作総指揮  スカーレット・ヨハンソン ほか4名

出演  スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、デヴィット・ハーバー、レイチェル・ワイズレイ・ウィンストン、ほか

 

内戦の裏側で

映画の時系列の話ですが、私は鑑賞中はてっきり「シビル・ウォーの後で、ナターシャはひとり逃亡してる」のだと思っていました。しかし、よくよく考えるとどうやら違う。時系列は大雑把に言うとこう(推測込み)。

 

ナターシャ、空港の戦いでトニー側を裏切り、スティーブに味方する(シビル・ウォー)

ナターシャ、トニーと言い争い、別れる(シビル・ウォー)

ナターシャ、追われる立場になる(本作)

ナターシャ一味、ドレイコフおよびレッドルームを壊滅させる(本作)

ロス長官と司法取引する?

ナターシャ、調達屋のリックからクインジェットを手に入れる(本作)

ワカンダに身を隠したスティーブのもとへ?

ティーブ、クリントやサム、スコットをラフト刑務所から脱獄させる(シビル・ウォー)

スコットとクリントは自宅軟禁(アントマン&ワスプ、エンドゲーム)

ナターシャ、スティーブ、サムは非合法な自警団活動を続ける(インフィニティ・ウォー)

インフィニティ・ウォーへ続く

 

調達屋のリックはいったいどうやってクインジェットを入手したんだよ...と思いつつ、

(細かい順番まではっきりとはわからないが)どうやら本作の出来事の大半はシビル・ウォーの裏で進行しているということになるみたい。もしくは、直後のごくわずかな期間。えーっ。

 

このナターシャの行動力というか、スピード感が凄すぎる... 流石は凄腕のスパイといいますか、これこそが彼女の強さの秘密なのかもしれませんね。アレクセイを脱獄させる作戦も大胆だったし、ドレイコフの呪縛を突破する作戦もそうでした。かっこいいぜ。

 

 さて、もうひとつは妹エレーナから受け継いだベスト。鈍いことに、渡すギリギリまで「IWでナターシャが着てるやつ」だと気付けなかった...。序盤で一瞬映った髪染め剤には当然ピンときましたが、ベストのデザインをよく見ていなかった痛恨のミス。詳しくは後程ですが、特に気にしていなかったあの服に文脈が乗るわけで、それはもう今一度『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』を見直すしかねぇ。

 

世相を反映しつつナターシャの物語を描き、さらにMCU全体としての物語も補完するというのはまさに離れ業。この手腕こそがマーベル・シネマティック・ユニバースなのだと畏れるばかりです。

 

解放

 ナターシャが初登場した『アイアンマン2』(2010年)時点から、社会の価値観はどんどん変わってきています。様々ありますが、今作に反映されているのは、(言うまでもなく)フェミニズムジェンダー平等のムーブメントです。

 

それらの運動およびこの映画の主人公たちは女性ですが、「『洗脳』から解放されて自分で考えて生きる」ことは、すべての人々に必要なことで、その権利と自由が与えられてほしいと思うので、私はこの映画にとても勇気づけられた気がしました。

 

いま生きている人々は、様々な考え方に縛られていると思います。「〇〇だから、××でであるべき」「こうしなくてはいけない」といったような、社会的性別、年齢、宗教、立場、人種や国籍...による決めつけ、あるいは、家庭や社会で特定の役割を果たすことを過度に求められるとか、 そうでなくても、例えば「朝早起きするのが偉い」「お金は節約するべきだ」とか、個人レベルの「should be」だってたくさん世の中に蔓延っています。

 

しかしながら、その価値観に心から賛同して生きている人は一体どれほどいるのでしょうか。早起きが体質に合う人は、早起きすればよいでしょう。しかし、だからといって、それが一般的に「偉い」とされるのは、社会の1日が朝(7時~9時)に始まるからに過ぎないのであって、もしもう少し遅い時間から始まるのであれば、「早起きできること」はアドバンテージでも何でもなく、「偉い」とされることもなかったのではないでしょうか。

「夜型」の人が努力しても、決して「朝型」になれない:研究結果 | WIRED.jp

 

他者との関わりの中で生まれる「役割」や「属性と個人の特性の結び付け」も同じで、社会的に「良し」とされていたことであっても、それは「社会を回すのに都合がよい」からであって、案外その前提は簡単に打ち崩すことができる。いままさに、スクラップ&ビルドのさなかに私たちはいます。

 

でも、指針となる価値観が崩れ去ってしまったら、今度はどうすべきなのか、迷子になってしまうかも。突然洗脳から目覚めてしまったウィドウたちのように... 頭を思いっきりぶつけたり、ガスをぶっかけられて初めて洗脳が解けて、その後自由を勝ち取るのも、勝ち取った後の道のりも決して簡単なものではありません。

 

「自分で考えて生きる」ことがどれだけ難しいか、それは、ナターシャの人生が示しているように思えます。逆に言うと、それだけの茨道でも往く価値とその尊さがあるということを、今作では描いてくれていたのではないでしょうか。

 

すべての人間が気持ちよく生きることのできる世の中になると良いですね。

ナターシャの家族

エレーナ、なかなかいい性格してたね~。「あの髪パサーってするやつ何?w」ってからかうの面白かったね。(あんなに堂々と会話してたら周りの人にナターシャのことがバレるのでは?とヒヤヒヤしましたが)

 

でも、先述の通り、あのベストがナターシャに受け継がれるとは思っていなかった... ナターシャが「妹からもらった服」を、どんな思いで着用して、そして『インフィニティ・ウォー』を過ごしていたのか、「もうひとつの家族」のために頑張っていたのか、察するに余りある心情に違いありません。

 

吹き飛ばされた彼女のためにナターシャが身を投げ出すシーンは、正直いうとちょっと泣きました。『エンドゲーム』を知っているからこそかな。ナターシャはああいう人なんだよと。あの結末を思い出して、じんわりときた。

 

アレクセイ。1995年時点ではそれなりにいい父親っぽい雰囲気も出していましたが、現代ではちょっと扱いが可哀そうだった(笑)家庭内で空気を読めず若干浮いている父、もしくは不潔で臭いセクハラオヤジ、という、まぁ「女性に疎まれる男性」としての側面が強く、観客の僕も背筋と心臓に少しの緊張を感じました。要するに気まずかったのです。

 

そんな彼にもいいところがあって、癇癪を起こしたエレーナに寄り添ったこと。最初こそ接し方を試行錯誤していた感はありましたが、拒絶されても逆上することなく、最終的に心をつなぐことに成功していたのは評価に値するのではないでしょうか。彼なりに、エレーナのことを大事に思っていたのだなと。あと、欲を言えば、もうちっとタスクマスターに善戦してくれてもよかった(笑)

 

母メリーナは、一見「既存の構造」に為すすべなく押し込められてしまう、オールドタイプの女性として描かれているのかな、と思いましたがやってくれましたね。エンジン停止に失敗して物理で解決するの笑ってしまった。アレクセイ(豚)を見殺しにするところはサイコ感が出ててゾクゾクした。でも、アレクセイ(人間)のほうは、一緒に暮らしていたのもあってそれなりに情はあった... と考えていいのかな。

 

「疑似家族もの」って、けっこう映画とかではよくある主題ですが、ここまで背景がダーティで当人たちも一見仲悪そうなのもなかなかないような気がします。でも、だからこそ、その中に見出せる絆があって、深く感じ入るものがありました。

 

今後のMCU

ポスト・クレジットシーン。ナターシャのお墓がささやかながら作られていたことを確認出来て、しんみりしてたんですが... なんだあのおばさん!?(驚愕)

ナターシャが亡くなったのは別にクリントのせいじゃないし、なぜ惑星ヴォーミアでの出来事のことを知っているのか。(アベンジャーズが公表したのかもしれませんが)実はドラマシリーズはひとつも観れていないので、何とか頑張って観ていきたいですね。

 

そして!映画のほうもガンガン再始動していくようですね。シャン・チーやエターナルズも楽しみですが、『スパイダーマン: ノー・ウェイ・ホーム』が楽しみで仕方ない。前作のあのラストからどう続くのか... 予告なども全くなくストーリーが謎ですが、なんだか不穏なタイトルでめちゃくちゃ気になるので、無事12月に公開されることを祈ってます。

 

それではまた!

 

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