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感想『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s feel] 第3章 spring song』【ネタバレ注意】

春が来た

 

皆が待ち望んだ春。一時は、何もかもが攫われて行ってしまうかのようだったけど、少しずつ色々なものが取り戻されてきて、こうして8月に無事公開されたことを、それだけでも喜ばしいことだと思います。新しい映画が見られるということはなんと素晴らしいのだろうか。

 

今作、HF3章は、何をとっても物凄かった。作画、演出、桜と士郎だけでなく他のキャラの描写も抜かりなく、アニメならではの戦闘シーンには度肝を抜かれました。そして物語。あえて原作ゲームのHFルートはプレイせずに鑑賞しましたが、これを16年も前に通過した人々をうらやましく思いました。同時に、間違いなく日本のサブカルチャー史に残るであろうこの三部作に、リアルタイムで「観客」として参加できて、とても光栄の限りでした。

 

高校生の頃、友人の猛烈なプッシュを受け、2014年秋に放送された『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』からFateに入門し、5年以上が過ぎました。もちろん当時の時点でも有名なコンテンツだったけど、それから考えられないくらい大きくなった。しかし、どれだけ大きくなっても原点はこの『Fate/stay night』。これからも多くの人々がこの作品に触れ、何かを感じ取ってほしい。何年も色あせることのない3部作になったでしょう。

 

特典 劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]Ⅲ.spring song 前売券特典 第3弾キービジュアルオリジナルクリアファイル

 

言峰綺礼

驚いた。まさか自分の中で一番株が上がったのが言峰だなんて(笑)1章の激辛麻婆のシーンも面白くてもちろん好きなんですが、こんなに人間味のある言峰は個人的に久しぶりだったというか... 

 

FateルートとUBWルートの言峰はなんか不敵な笑みか真顔しか浮かべてないイメージなんですが、HFルートの言峰は表情の大半はそのままに、士郎に協力してくれるし、イリヤを抱っこして駆け抜けるし、臓硯を浄化するシーンは本当に奇麗だったし、最後には序盤で殴り合う(超ムキムキ)。このギャップがよい。

 

まず言峰が一般人みたく車を運転してるのが面白い。あの言峰にも真面目に教習所に通って、免許センターに試験を受けに行った時期があったのだろうか?と思うと笑えてくる。さらによくよく考えてみると、言峰は自分の異常性に思い悩むくらいには良識のある人間だったのだから、そりゃ教習所ぐらい真面目に通うだろうと思って、切なくなってしまう。(まあいつ免許をとったのかとか、そもそも持ってるのかどうかは知らんが)

 

ほかにも、「登山の経験はあるかね?」だとか「ヤケかね?」とか、ちょっと士郎と仲間みたいに口を利いてるの好きすぎる。ほかの方の感想で読んだけど、「目覚めたか?」だなんて声をかけるのは、確かにヒロイン面している。

 

今作では過去のfateアニメを意識している節がちらほらあったと解釈していますが、言峰の切嗣に対する語りなんかもそうでしょう。自分と似た者だと勘違いしていたが、実は自分には無いものを沢山持っていた。そして若いころの言峰とクラウディアさんもまさかの登場。自分の手にかけたいと思うくらいにはクラウディアさんのことを愛していたんだろう。

 

洗礼詠唱も劇場の音響で鳴り響く中田譲治ボイスが相まってかっこよかったし、教会の上の十字架が臓硯の墓標のようでもあり、言峰が聖職者であることを強調してもいるようで印象的なカットだった。死んでなかったけど。

 

ラストの士郎との殴り合いは、まさにぶつかり合いだった。今まで体を覆っていた服を脱ぎ捨て、薄着になる所にただならぬものを感じました。UBWギルガメッシュ戦も派手でよかったけど、士郎の敵はやはり言峰が相応しい。

 

ボスである言峰について、ここまで深く描写してくれるとは、恐れ入りました。

 

士郎とアーチャー

 見どころが一つ、士郎vsバーサーカー。原作ではじっくり描写されているのに比べて物足りないという声もありますが、自分は普通にいいなーと思った。ヘラクレスの逸話をも盛り込んだのは凄いの一言。正気で戦うヘラクレス、見たいなぁ。

 

そして、アーチャーから譲り受けた腕の解放。「―――ついて来れるか?」に対し「てめぇの方こそ、ついてきやがれ―――!!!」の叫びが本当に気持ちいいし、砂塵に塗れた視界が開けて青空になる映像は本当に奇麗だし、なによりアーチャーの貴重な微笑み。そして劇場に響くEMIYAのアレンジ!

 

自分とは違う道を往くことにした士郎への安堵や応援の気持ち、自分にできなかったことを選べた士郎への眩しさが表されている...と聞いて「なるほど!」と感銘を受けました。わたくし黒輔は、UBWの士郎とアーチャーの関係が好きで、「英霊エミヤという結末を見せつけられて尚のこと自分の正義の道をいく士郎」がすごく格好良くて感動したんですが、HFではまた違ったかたちでアーチャーが士郎のことを認める事になるのが面白いなと。

 

最後の最後でアーチャーが士郎の魂を引き留めてくれますが、あれは、自分と違う道を踏み出した士郎への手向けのようなものだったのでしょうか。

 

士郎&ライダー vs セイバーオルタ

 びゅんびゅんうごいてすごかったです(小並感)いやいやほんとに。最後の最後でようやく真骨頂を見せたライダーさんの動きが物凄いのなんのと。激し動きをしながらもしなやかな手足がしっかり描かれているのが素晴らしい。

 

そして動くだけでなく、魔眼の効果もしっかり挟んでいくので、「何がどうなっているのか」もしっかり分かる。さらに「私は信頼されていますので」と煽るのも忘れないし、いい緩急になっている。

 

宝具・ベルレフォーンは本当に美しくてちょっと涙が出そうでした。そしてFateルートでは負けてしまうエクスカリバーに今度は打ち勝ったという背景もあり、ライダーさん大活躍でよかったと思います。

 

セイバーオルタは敵役としてあっぱれでした。ufotableによるFateルートの映像化も見たいといえば観たいのですが、可能性は低そうか...

 

2人の姉 凛とイリヤ

姉力(あねぢから)が最強だったお2人。妹を厳しく叱り、それでも救ってくれようとする凛と、弟をやさしく諭し救ってくれるイリヤが対照的でした。

 

2章でもそうでしたがHFの凛ちゃんさんは本当にかっこいい(桜に姉さん呼びされたところ以外は)。宝石剣を持って大暴れするシーンはどこのスーパーヒーローやねんっていう体術でした。それにしてもあの剣つよすぎや。そして、直前で甘いところが出て桜を殺せない...というのも、それはそれで凛らしく。聖杯戦争終結後しばらくは桜と2人の時間をじっくり過ごしていたようですが、お互いの絆を深め合っていてほしいと思います。

 

そしてイリヤ。2章終盤で切嗣へのわだかまりを解き、そして士郎に助けられたことで、彼女の心情も変化していったのでしょう。それにしても最後アイリがちょっとだけ出てくるとは思わなかった。イリヤにとっての救いもしっかり映画で描かれていて、改めて情報量に感嘆するばかりです。イリヤもまた士郎にとって(桜とはまた違った種類の)特別な存在であるので、名前を叫ぶシーンはうるっときました。

 

聖杯戦争のルーツ

これは原作勢も驚いたシーンだったようですね。説明がすべて理解できたかどうかはちょっと不安なんですが、遠坂・マキリ・アインツベルンの先祖が見られたのは何となく嬉しかったです。ゾォルケンも遠坂永人もイケメンだったな...。

 

正義、願い

よくロボットだと比喩される士郎が、イリヤの命と引き換えになるという葛藤を抱えながらも、自分のために「生きたい」と叫べる人間になって、士郎をそうしたのは他でもない桜であって、ある意味HFは一番士郎が救われているルートと言うことができるのかもしれません。(他の2ルートの結末もそれはそれで好きなのですが)そして、今まで目立たなかった桜も他の2名のヒロインにはない大きな役割を与えられている。

 

身近な大事な人をまず助けて、その人の罪を共に背負っていく。それがこのルートで彼が見出した正義で、自分の正義にまっすぐな点は変わらない。それが士郎。そしてそれを受け入れる桜もまた本当に士郎に救われたんだろうなと。最後まで残った小さいシェイプシフターは、黒桜の時は彼女に残った良心の欠片のようでもあり、戻った後は彼女が償っていく咎の象徴なのかなと思いました。

 

そんないびつだった2人は共に踏み出せるようになり、春はゆく。素晴らしい物語でした。折を見て原作もプレイしてみたいですが、いまはこの劇場版を噛みしめていたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

1章の感想はこちら

2章の感想はこちら

 

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